禁酒日記⑧変わりたい

公園のベンチで

その日は火曜日でした。前日は祝日のため土日を含め三連休で、その間は当然飲んだくれていました。

火曜の朝は、やはり頭も体もだるかったし、仕事もゆるゆると取り掛かっていました。それでも午前中で一区切りが付き、午後からは、急ぎの仕事がとりあえずなかったので、少しぼーっとしようと、会社近くの公園へ行き、ベンチに座ってゆっくりしていました。

グルグル

セミの鳴き声がけたたましく響く中、ぼんやりと考えていました。今の自分、これでいいのか。朝活はまったく実行できていない。仕事は中途半端。

手帳をぱらぱらと開いて見ました。日々のスケジュールのほかに、目標だったり、決意したことなり、これに取り組むぞとか、意気込みとかをその都度書いていました。それを見返して、情けない思いに駆られました。

ずっと前から、決断し、実行していたものの、その度にいつもすぐに挫折しているのです。何も続いていないのです。続かないから、何も変わっていません。

「同じところをグルグルと回っている」。そんな思いに駆られながら、手帳の次のページを開くとさらに愕然としました。「同じところを回っている」。1カ月前の日付で今思っていることと全く同じことが書かれていました。

大きなメリット

「いいかげんに変わらなきゃ」。そう思い、一呼吸入れて考えました。どうしたら変われるか。何にどう取り組むか。

 汗ばむ陽気の中、ベンチに座り難しい顔をしながら、まず何から取り組むべきか、まじめに考えました。考えて考えて、最終的に行き着いたのは、しかし結局のところ「禁酒」でした。

どう考えても、日常的に酒を飲まないことで得られるメリットが、ほかの何に取り組むより大きいのです。

酒を飲まず二日酔いがなくなれば、朝活ができますし、仕事に一生懸命取り組めます。酒を買わなくてよくなれば、お金は貯まります。そもそも健康にもよいし、最近少し興味があるアンチエイジングにも間違いなく有効です。

数値目標なし

こうしたメリットを手帳に書き込み、「今度こそ」と決心しました。一方で、また今度もダメかもしれないという不安もよぎりました。そもそも、その週は、仕事上必要な飲み会が2回もあり、飲まない訳にはいかないからです。

そこで、もう今回は思い切って、「週〇日は飲んではいけない」のような具体的な目標は決めないことにしました。「できる限り飲まない」。もうそれだけ。

どうしても、仕事上飲まないといけない日や、週末など飲みたくてしょうがない日は必ず来る。

それに無理して抵抗しようとしても、きっとまた失敗するし、その度に挫折感を味わい、自己肯定感を損なったりしてはいけないと判断。ただ、飲まないで得られるメリットは、繰り返し頭の中に叩き込もうとしました。

あまりにぼんやりとした目標ですが、何だか今回は何とかなる、いや何とかしないといけない。これで変われるかも、と思うとやる気が出てきました。

飲みたくなったら、とにかくメリットを思い出そう。自分が変わるための鍵となる習慣は、「禁酒」であることは恐らく間違いない。

決心は強く持ちながらも、ハードルは大幅に下げた禁酒ルール。「平日禁酒」よりもさらにゆる~い「ゆる禁酒」。

もちろん今日から始めます。「変わるんだ」。そう強く決心し、公園を後にしました。